2009年06月28日

生鯖/マサバ 七百四十五かん目

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 店主曰く、「今日のサバをみてください」。
 大分県でも北、周防灘でとれたというもので、追加はヒラメの昆布締めと、この生のマサバとした。
 このマサバを見せられたら食べないわけにはいかない、それほどに見事なものだ。

 目の前におかれた一かんを見て驚いた。
 ネタの切りつけが、独特というかユニーク。
 平造りに切っている。
 その下に小さすぎるすし飯が、まるで仁王さんに押しつぶされそうになっている天の邪鬼のようではないか。
 このマサバの上に、やはり胡麻と青ネギ、ショウガがのっている。
 素晴らしいサバで恐ろしいほどにうまい。
 けど胡麻が邪魔だな。
 やっぱり胡麻の風味が感じられるのだ。
 それにすし飯は何処に?
 すし飯は小振りである場合には、強めの味つけにするべきだ。
 でもこの店のすし飯の味つけは控えめとなっている。
 地方のすし屋では、このすし飯の不具合に地団駄を踏む思いに駆られる。
 マサバの旨さだけでも、この店の優れているのはわかろうというものだが、おしい。

 すしネタの味わいに満足、すしの考え方に疑問を感じて、店を後にする。
 時刻はまだ12時半でしかない。
 もうひと歩きしよう。

2009年05月20日
なかたに 山口県山口市下竪小路76
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海胆/ムラサキウニ 七百四十四かん目

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 山口県日本海側はウニでも有名だ。
 春からムラサキウニがとれ始め、バフンウニになり、秋になるとアカウニとなる。
 マグロ(中トロ)、卵焼き、ウニの軍艦。
 ここでウニがきて、五月なのだから、やっぱりムラサキウニなんだろう。

 キタムラサキウニとムラサキウニ、エゾバフンウニとバフンウニ、ムラサキウニにもバフンウニにも北方系(寒い地域にくらすもの)と南方系(あったかい地域にくらすもの)があるのだな、と思われるだろう。
 ところがキタムラサキウニとエゾバフンウニ、バフンウニの三種はオオバフンウニ科。
 ムラサキウニは唯一ナガウニ科なのだ。
 ムラサキウニはキタムラサキウニとは縁もゆかりもない。

 目の前に来たものは色合いからして、そんなにいいとは思えない。
 なんだみすぼらしい。
 あまり期待しないで口に放り込んだら、口の中が爆発したのだ。
 甘さが強すぎるほどに強い。
 我々が関東の市場で買っているウニは、なんなんだろうね。
 これがウニだとしたら、あれはウニではない。

 濃厚な旨味が殷々と続き、あまりにうまいので、卵焼きの存在を忘れてしまったほど。
 そう言えば、この店の卵焼きは出汁巻きだったっけ、ああ、卵焼きの記憶がウニのうまさでかき消されてしまっている。

2009年05月20日
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2009年06月25日

煮穴子/マアナゴ 七百四十三かん目

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 煮穴子が出てきた。
 関東の煮穴子、関西の焼き穴子、どちらが出てくるのだろう?
 こんなことを考えていたら、いきなりマアジと対になってきた。
 そう言えば、この店の若だんなは東京銀座仕込みなのだった。
 煮穴子を、軽くあぶっている。
 あぶるところと、あぶらないがあって、それは煮方との兼ね合いだろう。
 あぶる以前に、手にとるだけで、崩れるほどに柔らかく煮あげるところと、しっかりとマアナゴの身質を活かしている店がある。
 今回のものはしっかりとほどよい煮方で、固まったコラーゲンを熱で煮とかしている。
 あぶったために風味が立ち、程良い甘みでマアナゴの味わいを殺していない。
 なんとも素晴らしい煮穴子で、これは非常にうまい。

 山口瀬戸内海側はマアナゴの産地でもある。
 ご当地であがったものだろう、と想像するが、聞き漏らしてしまった。
 後々まで、マアナゴの旨味を感じながら、追加するなら、これだな、なんて思う。

2009年05月20日
なかたに 山口県山口市下竪小路76
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2009年06月24日

鰺/マアジ 七百四十二かん目

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 この店のすし飯は非常に小さい。
 すし飯が小さいとき、味つけは濃いめである方がいい、そう思うのだが、味つけも控えめだ。
 あえてこの店の弱点をあげると、やはりすし飯だろう。
 そこに16グラム以上ありそうなマアジの片身がのっている。
 マアジは大きいのはだめ。大きいマアジで味がよいのはめったにない。
 握りにするなら片身 一かん、このくらいが最上だ。
 すし飯の大きさを鑑みると非常にアンバランスな握りだけど、このアジは絶品。
 すしネタを味わうなら、これでもよい、のだろう。

 このマアジはどこから来たのか?
 山口市は日本海にも、瀬戸内海にもほど遠からず。
 面白いのは毎朝、商店街に干物を売りに来る人がいて、「どこから来ているのですか?」と聞くと、萩だという。
 萩はマアジの一大産地。
 日本海のアジは脂がのっており、太平洋側のと比べると別種の感がある。
 山勘ながら、このアジは萩産だと見た。
 まことに見事なアジで、味は言うことなし。
 このアジを食べるため、だけでも、この店にきてもいいだろう。

2009年05月20日
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2009年06月23日

鱧/ハモ 七百四十一かん目

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 ハモは関東では特種な食材だが、西日本に来ると、それほどでもない。
 すしネタとしてもたびたび出合う。
 ハモの産地である、山口県のすし屋でちゃんと出てくるのが、なんとなくうれしいところ。
 県水産課などでも、ハモの販売促進に取り組んでいる。
 山口は「ハモを売らないといけない県」なのだ。

 すしの重さが20グラムほどなのだから、ちょこんとして、小さい。
 上にのるのは梅肉と、青じそだろう。
 この店の特徴が胡麻をパラリと落とすことらしい。
 梅肉、青味はいいにしても、胡麻の意味合いはよくわからない。
 骨切りして、牡丹の花びらが開いた模様がなかなかよろしいな。
 口に入れるとフォワっとほどけるようで、骨切りもよくできている。
 ハモにも脂がのっていて、すしとしての完成度が高い。

 ただ、この大きさでは、あと二かんほど食べたいものだと、もの足りぬ思いがつのる。

2009年05月20日
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2009年06月22日

栄螺とつぶ/サザエ、エゾボラモドキ 七百四十かん目

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 二かんずつ、セットになって出てくる。
 白身、白身に、今度は巻き貝、巻き貝となって、つぶとサザエ。
 両方とも北浦(山口県日本海側)の名産品。

 サザエもつぶも生のままで、サザエにはオクラのような浅葱のようなものがのっている。
 実を言うと、サザエの身は硬く、その硬さのなかにもうまさがあって、なかなかうまいものであったが、その青い物体の薬味的な役割が感じられなかった。
 このあたり、すし飯に巻き貝をのせる難しさがある。
 関東のすし職人で、絶対に巻き貝を生で握らない、という人が少なくない。
 やはりすし飯との相性が悪いな、とは思うものの、このサザエがうまい。

 つぶも同様なのだけど、磯臭さが弱く、サザエの後だと印象が薄い。
 ここで問題なのが、似たもの同士を一緒に並べる意味合いだ。
 エゾボラ属の巻き貝なので、エッチュウバイなどよりもサザエに近い。
 近いもの同士を組み合わせて、微妙な違いを感じて欲しいということだろうか?

2009年05月20日
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2009年06月21日

築地土曜会は7月4日

築地土曜会を7月4日に行います。
場内を回る店員は自由枠以外は満杯となりましてが、懇談会のみの参加は募集中です。
今回から、参加者にはぼうずコンニャクバッジをお配りします。
また場内のお魚の試食、お土産つきです。
興味のある方、質問などは。
掲示板に参加してください。
http://csi.or.tv/tsukiji/kb/rb.cgi
詳しいことは
http://csi.or.tv/tsukiji/doyoukai.html
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鮃と真河豚/ヒラメ、マフグ 七百三十八かん目

 店の入って右手がカウンター、左手にテーブルがある。
 客はまだ正午前なのでボク一人。
 対峙するのは、たぶん60歳代後半とみられるすし職人
 当然店主とみた。
 話してみると、子息が東京で修業して帰ってきたのだという。
 だから握りは江戸前ということか。

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 待つほどもなく出てきたのが、マフグとヒラメ。
 透明感のある白身がちょこんと仲良く並んでいる。
 ともに身が生きている。
 ヒラメなども弾力が強く、それでいて旨味がちゃんと浮かんでくる。

 ヒラメはともかく、マフグが出てくるのが山口らしいところ。
 近くにある川端市場でも、また萩に出ても、フグのない日はないというくらい。
 山口に来て、すしネタとしてもちゃんとフグが出てくるのが、とても新鮮に感じる。
 上にのるのが紅葉おろし、とうぜん少量醤油をつけて食べてみる。
 これはまさに絶品だろう。
 マフグは活けなのだろうか、ものすごく弾力があり、じわりじわりと旨味が出てくる。
 敢えて、問題となるのがすし飯との相性だろう。
 それを考えるなら、もっと薄切りにして重ねて乗せた方がいいかも知れない。
 こんな思いなど吹き飛ばすマフグのうまさだ。

2009年05月20日
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山口県山口市『なかたに』

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 県庁所在地でもっとも人口の少ない都市が山口市だ。
 県の中心とはとても思えず、むしろ山と清流のある、古い街並みを残す町といった方がしっくりくる。
 ボクの趣味のひとつが、ただただ日常的な町を“無駄に歩く”というものなのだが、山口市ほど無駄歩きして楽しいところを知らない。
 山口市を半日歩きした限りは、どこにも着飾った、作り込まれたわざとらしさ、いかがわしさがない。
 まことにボク好みの町だ。
 もちろん、市の中心部には長い長いアーケードがあり、県庁所在地なのでデパートだってある。
 それにしても繁華街としてはみすぼらしいもので、若い女性が最新のモードを買い求めることも難しそうだし、ビックリしたのはどんな町にもありそうな怪しい一角が見つからない(探したわけではないが)。
 だからいい。だから普段着の町のたたずまいが楽しめる。

 その繁華街からほど遠からずに、白い暖簾だけが下がった『なかたに』がある。
 地元のセトポン、ハタポンに教えてもらったすし屋なのだけど、外観からは家業がわからない。
 教えてもらったから、おずおずと入っていけるといった、そんな店だ。
 暖簾をくぐった途端に、これはいけると確信が持てた。
 無駄な装飾がない、清潔だし、センスがいい。
 ただし、サービスは鄙のもので、これもいい。

 見渡しても品書きが見あたらない。
注文はどのようにしたらいいんですか?」
「ええ、ウチはお好みでなければ、勝手に一人前握るだけなんですけど」
 その勝手に一人前というのをお願いする。

 漬け台に白いまな板皿、まずはマフグとヒラメが一度に置かれる。
 握りは非常に小さい。
 ネタを含めて25グラムから30グラムくらい。
 すし飯は基本的には20グラムくらいだろう。
 地方都市にしても、東京都内にしても、かなり小さめ。
 マフグ、ヒラメ、サザエ、ハモ、アナゴ、マアジ、ウニ(ムラサキウニ)、マグロ、卵焼き。
 これにマサバとヒラメの昆布締めを追加する。
 さてすしネタは総てが出色のものだった。
 問題はすし飯だが、やや柔らかく、酢が弱すぎるように思える。
 総合的には素晴らしいものだが、唯一難点はすし飯といったところか。
 しかし、これで合計2980円とは、安い。

 山口県にこなければ食べられないネタがほとんどだった。
 しかもサービスだって、なかなか程良いのだ。
 ゆっくりお茶を飲みながら、夜の『なかたに』もいいだろうな、なんて思う。
 
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2009年06月20日

どんちっちあじ/マアジ 七百三十六かん

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 待ちに待った「どんちっちあじ」が入荷してきた。
 1尾約120グラム前後、20センチ弱のマアジで、鈍い銀色で触ると柔らかい。
 「どんちっちあじ」は島根県浜田市と島根県が協力して作り出したブランド
 島根県西沖のマアジは日本屈指の品質を誇る。
 一般には「関あじ」などが有名だが、実はマアジを加工する業者(プロ)の間では「長崎県沖から島根県沖までのマアジ」が日本一だとされているのだ。
 日本一うまいマアジのとれる海域でとり、しかもていねいな処理をほどこし、特種な機械で脂ののりまで確かめて出荷する、これが「どんちっちあじ」なのだ。
 入荷してきた箱には「どんちっちラベル」が張ってあるけど、「ブランド化した理由」を説明した文字が小さすぎて誰も見ない。
 買い出し人たちには、ただの薄汚れて、鮮度の悪いマアジにしか思えないらしい。
 誰一人手を出さない。

 数尾買い求めて、『市場寿司 たか』に持ち込む。
 たかさん、見た目の悪いアジを手渡されて、少々困惑気味だ。
 袋の中をよく見ると、ワタと餌で汚れている。
「たかさん、“どんちっち”なんだ。よろしく」
「“どんちっち”ってなんだっけ」
 もうなんども教えているのに、ぜんぜん覚えられないらしい。
「島根県浜田西沖で巻き網によってとったアジを、脂肪ののり具合を機械で量って出荷したもの。この脂ののりを量る機械の開発って大変だったんだよ」
「でも見た目は平凡だよね。身が氷で凸凹してるし、見た目最悪。それに柔らかいね。なに、これ、本当に柔らかいよ」
 まな板で皮を引きながら、ぶつぶつ
 味見に一切れ口に放り込んで「ほーーー、なんじゃこれは」。
 ボクにも一切れ「食べてみなよ」。
 口のなかに放り込んだ途端、口の中で溶けていく。それほどに脂がのっている。
「これ、アジじゃないよね。アジとはまったく違ってるよ」

 出来上がった握りはなかなかきれいだった。
 ネタの表面から数ミリほどに乳白色の脂の層がくっきり見える。
 これを口に入れた途端に表面の脂が溶け始める。
 すーっとネタの繊維が、ほどけるようにとろけて、すし飯と渾然となる。
 甘みは当然、甘みではなく、脂の味であり、ちゃんとマアジの旨味が後から感じられる。
 なんともいえずダイナミックな味わい。
 こんな小さなアジのどこから、この感動的な旨さが生まれてくるのか?

「やっぱりアジじゃないよね。とてもアジに思えない」
 たかさん、また刺身に切ったものを食べてみて、ぶつぶつ独り言をもらしている。

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 今回の「どんちっちあじ」は仲卸の段階でキロ当たり500円でしかなかった。
 なんと1尾が60円から80円ほど。
 これは見た目の悪さと、荷の作りの悪さもあるだろうけど、「どんちっち」のブランドとしての意味合いが、思ったほど普及していないというところに原因があるのだろう。
 島根県の水産アドバイザーとしては、安くてうますぎるアジの握りを食べながら複雑な思いになる。

2009年06月18日
島根県浜田市「どんちっち」
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寿司は『市場寿司 たか』
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